元旦放送のHHKスペシャル「2011 ニッポンの生きる道」

2011年01月04日

昨年の12月7日頃、ほぼ毎日社員宛に配信されてくる弊社社長からのメールに、"元旦放送のHHKスペシャル「2011 ニッポンの生きる道」を視聴してみて下さい"と書かれていました。
私は社員ですから、当然ながら予約録画しておいて、早速視聴したのであります。経済番組かしらと思っていたのですが、2時間弱の中に、環境問題や教育問題なども含め、色々な実例や提言があって結構面白かったので、以下にちらっと紹介したいと思います。

2011年、日本が何を強みにし、これまでの発想をどのように転換するかを、5名の専門家を迎えて提言していくという番組で、ゲストはパデュー大学特別教授で2010年ノーベル化学賞受賞の根岸英一さん、コマツ会長の坂根正弘さん、一橋大学教授の米倉誠一郎さん、日本政策投資銀行参事役で「デフレの正体」著者の藻谷浩介さん、愛知淑徳大学教授の真田幸光さんでした。

まず、日本の技術と世界シェアの現状ですが、日本企業の電子機器の最終製品の世界シェアはそれほどでもないが、それを構成する高機能な部品や材料は日本が強く、例として、液晶TVがあげられました。
2005年頃は日本が世界一のシェアを占めていたのが今は、LG電子やサムスン電子等の韓国メーカーが首位。しかし、液晶ディスプレイのパネルの材料では日本が世界シェアの8割を占めているそうです。
これは、液晶画面を斜めから見ても美しく見せる素材「配向膜」がほぼ市場を独占しているからで、この技術は、コスト・鮮やかさ・塗りやすさ・速さという相反する要望をいかにして同時に満たしていくかという「すり合わせ」を行う=現場の緻密な積み重ねによって、他国の追随を許さない技術を生んでいるのだそうです。
しかし、いかんせん、日本は技術で買って、ビジネスで負けている。

また、真田幸光さんによると、この変化の時代、「スピードと、リスクをとれる決断力」が必要とのこと。し烈なグローバル競争を闘うために大企業が次々と海外に脱出する時代だが、日本再生の鍵を握るのは、国内に残って外貨を稼ぐ中小企業である、と。
ヒット商品を生み出す(黒字化)までに要する期間は、2年未満は中小企業が53.7%、大企業は46.4%。スピーディな商品開発で世界に市場を開拓して、少量・多品種・高品質でユーザーの役に立つ商品によって高利潤を上げている会社は実際に多数あるのだそうです。(例:株式会社イスマンジェイのシリコン合金:原料がシリコンで、鉄の約2倍の堅さだが40%の重量で済む=鉄の代わりになる。この会社の渡邊敏幸社長は、大手鉄鋼メーカー勤務中、これを何度提案しても、開発期間や採算のめどが立たないと却下されたため、会社を離れて仲間と4年かけて開発したそうです)
日本企業の99.7%が中小企業であるが、まずはチャレンジして世界に出てみる(展示会等)、そうすればいい物であれば世界から声がかかる、実際にそのような実例は多数あるのだそうです。

そして、私が面白いと思ったのは、藻谷浩介さんのお話。
"「景気回復すればまた売れる」というウソ話は信じるな。KY(空気しか読まない)のはやめてSY(数字を読みましょう。
2002~2007年、日本経済が戦後最長の好景気だった時期があったが、その時実は、名目GDPは上がり続けていたのに、小売販売額は下がり続けていた。これには、景気以外の理由があり、それは何かというと、「人口の波」と呼ばれるもの、つまり現役(生産年齢:15~64歳)の人口が減少して、65歳以上の人口が増加したことによる。
人口分布をグラフでみると、横軸で生まれたのが左でだんだん右に年齢が高くなるとすると、1940年のグラフでは右肩下がり、1990年では真ん中が盛り上がっていて、2050年には完全に右肩上がりになっているであろう状況。
日本では、80歳代は今から3倍に増えると言われている中、いかに元気に天寿を全うできるかが最大の課題。日本が先に経験するが、10年20年遅れで、韓国、シンガポール、中国等がはるかにすごい勢いで同じ問題に直面する。先に日本が解決しなくてはいけない。最後までピンピン元気でコロリ、という皆の理想をいかに実現するか、社会全体で取り組む必要がある、そのために日本の技術(ロボティクス等)が色々な役割を果たすのだ。"

・・・上記のような、消費の低迷は、景気のせいではなくて人口だ、というのは非常に面白いと思いました。また、「日本ブランドを築き、高値で売る仕組みを作るのが競争に勝つ秘訣であり、薄利多売から高利小売への転換が必要」という話もありました。
"「景気のせいだ」と言った瞬間に思考が停止してしまい、政府が景気対策を打つまで手が打てないと言ってしまうが、政府は予算の2倍以上使って景気対策をしている。これ以上政府にやれと言っている暇があったら、自分たちは何をしたらいいのか企業側は考えるべきだし、やはり若い人の賃金を上げるべきだ。
そのことによって、今、売れないと言っている車や家電は今より売れるし、収入があれば今よりは結婚する人は増える。
また、いい物を安く売るのは人口が多い社会。逆に人口が減っていく社会において物を安くしていくと、買っている時は嬉しいかもしれないが、実は買っている人も生産者なので、自分が努力して働いたのに給料が下がり、税収が下がっていき、年金生活者の年金も不安になる。
世の中に純粋に消費者だけの人なんていないのに、一方的に消費者側のことばかり考えているから安売りに走ってしまう。
日本は中国・韓国に対しては貿易黒字だが、フランス・イタリア・スイスに対しては貿易赤字である。特にスイスは世界最高水準の人件費を持っているのに、日本には貿易で黒字を獲得している。これは、本当の意味でブランド価値が強い物を作っているからである。"

上記の「日本ブランド」を築いた例として、中国の富裕層をターゲットにした青森の林檎「大紅栄(だいこうえい)」が挙げられ、これは1個の価格が日本円で2千円するにも関わらず非常に売れているそうです。これは、中国において「赤」がおめでたい時に使う色であるのと、この林檎が他の林檎に比べて大きく赤く、(本当にいいものだけが欲しい)という富裕層の心をつかみ、その土地ならではの歴史や価値がある点でもステータスとして買われているのだそうです。
このような高利小売のマーケットは、世界にまだ多量に眠っているし、景気がどうなろうとも生きていける企業はいくらでもあり、景気のせいにする前にやれることはいくらでもある、と藻谷さんはおっしゃっていました。

その他、米倉誠一郎さんは、「技術がどんなに良くても売れない」「モノだけを売るな。解決策を売れ(解決策が世界を制す)」として、新幹線の運行制御システムや、日立をはじめとする各社プロジェクトの電力制御システムと、中国で計画されているスマートシティ建設構想、IBMが「モノを売る企業からサービスを売る企業」へ移行し、SMARTER PLANET を掲げ、スマートシティのように効率化を電力に限るのではなく、地球上のありとあらゆる課題に「解決策=ソリューション」を提示するビジネスを展開している例を挙げ、ターゲットは地球であるとのお話でした。

この後も、日本が持つ海という資源から、海水からウランを採取する技術や、光触媒から光合成を行う研究の紹介、そして、日本が生き抜くための人材をどうやって育成していくのか、など話は尽きませんでした。

お正月からなかなかに頭をはっきりさせるものを観た感じです。私はちっぽけな一従業員でありますが、企業も日本も人なのですから、やはりこのようなものは、観た方がいいですね。


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Posted by うみかじ at 00:14│Comments(0)つれづれ
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