「安保村と原子力村(1)」矢部宏治さんのコラム(琉球新報6月9日)

2012年06月13日

琉球新報に連載の「落ち穂」。
6月9日は、書籍情報社代表の矢部宏治さんの「安保村と原子力村(1)」 でした。
ここにご紹介します。

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このコラムの1回目で、昨年「沖縄・米軍基地ガイド」を刊行したとき、はじめは本土の書店にほとんど置いてもらえなかったと書いた。配本わずか200部と言われたと。
だがそうして苦境に陥る一方、不思議なことに見知らぬ人たちが次々と手を差しのべてくれたおかげで、現在では今年中に2万部にも届きそうな売れ行きになっている。
驚いたことに、著者としてまったく無名の僕に対し、「うちの書店でトークショーをやりましょう」と言ってくれた書店の方が何人もいた。また本屋でもないのに自分で500冊(!)も買って、ネット上で紹介ページを作って売ってくれている人もいる。
もうひとつビックリしたのが、本の中で著作を紹介した高名な学者の先生方だ。本を贈るとみなさん丁寧な礼状を下さったり、わざわざ自分から会いに来てくれたりした。僕も長く出版の仕事をしているが、こういういことは普通の本では絶対に起こらない。
ではなぜこの「沖縄・米軍基地ガイド」の本に限ってそういうことが起こったのか。その謎を解くカギは、どうやら先生方の話によく出てくる「安保村」という耳なれない言葉にあるようだった。
ちょうど本が出たころ東京では、原発事故の関係で「原子力村」という言葉をよく耳にするようになっていた。つまり電力会社や東大教授、官僚、マスコミなどが一体となって作る「原発推進派」の利益共同体のことだ。同時にこの共同体は、豊富な資金に物をいわせて、推進派に都合のいい情報だけを広め、反対派の意見は弾圧する言論カルテルとして機能する。
「安保村」というのはそのスケールを大きくしたような存在で、「安保推進派」が集まって作る利益共同体=言論カルテルのことなのだという。といっても「戦後日本」とはそもそも安保推進派が作った国なので、安保村の言論統制は大手マスコミを中心に、ほぼ日本全体におよんでいる。
自分で本を出してみてよくわかったのだが、「沖縄の米軍基地」というのは、この安保村にとってもっとも都合の悪い、本土に伝わっては困る情報なのである。
(2012年6月9日 琉球新報 19面 「落ち穂」より)
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Posted by うみかじ at 00:52│Comments(0)日記
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